七夕。天の川じゃなくて、松庵川で逢いましょう。
- 2015/07/06
- 20:05

実に梅雨らしくシトシト雨の日々が続いています。
明日は七夕ですが、今年も夜空に天の川を眺めるのは期待できそうにありませんね。
イラストは昨年末絵はがき用に描いた「松庵川」がモチーフです。
ちっとも川らしくないただのドブ川ですが、ちょっとロマンチックな感じに見立ててみました。
松庵川は西荻窪駅(東京都杉並区)の北西の「松庵窪」と呼ばれた一帯から南東方面へ流れ、環八を越えた辺りで善福寺川に合流する河川の通称です。
大正時代後期に、排水を流す為に開削された人工の水路だったものが、昭和30〜40年くらいにはその流路のほとんどが暗渠化され、水路としての役割を終えました。
西荻窪に越してきた頃、高架下の西友の西側出口の駐輪場あたりから南側にかけてぐっとこう配がついた坂道や、ゆるやかに谷状になった地形が気になって、「きっとここは川が流れていたんだろうな」なんてほんのり妄想をしていたのですが、
あるとき吉祥寺の本屋さんで出会った「地形を楽しむ東京「暗渠」散歩」(本田創 著・編集/洋泉社)という一冊の本に松庵川のことが記載されていて、妄想じゃなかったんだ!そしてなぜこんなに私の知りたい情報がピンポイントに載っているのだ!と、即座に購入。
その異常なまでの暗渠熱にぐいぐい引き寄せられたのでした。
かつて川があったであろう痕跡、(橋の欄干や護岸、苔むして曲がりくねった路地など)また数々の暗渠サインと呼ばれるアイテム(緑道に設置された、杉並区名物の金太郎が描かれた車止めや、銭湯など水を使う商業施設)が松庵川の流路とリンクして、西荻のまちがより立体的に見えてきました。
そんな中、Twitterを通して交流が始まった吉村生さん、高山英男さん(上記の本の執筆者でもあります。)のお二人が松庵川を描いた絵はがきを訪ねて、私が日頃お世話になっている西荻案内所にいらっしゃったのをきっかけに、「西荻暗渠探検」の企画がスタート。
吉村生さんガイドの松庵川の痕跡を辿る暗渠探検は2度のツアーに留まらず、その後暗渠報告会が行われ、あまたの暗渠好きが鍋をつつきながら集う異様な(すてきな!)イベントへ発展したのでした。
人工的に掘られ、しかも流れが止まってしまった川ですが、実際に歩いてみると今も営業が続く銭湯や、養魚場、クリーニング屋さんや、染め物屋さんらに代表される商業施設は川辺の様子をつよく残し、何よりそこに暮らした人たちの川に対する証言が生さんによって次々と引き出され、失われた川はその記憶を取り戻したかのような気がしました。
そんな吉村生さんと高山英男さんがつい先日、あたらしい暗渠の本を出されました。
その名も「暗渠マニアック!」(柏書房)。
歴史掘り下げ型の吉村生さんと、俯瞰・分析型の高山英男さんのお二人が交互に繰り出す違ったかたちの暗渠愛から、よりまち歩きへの興味をかき立てられるつくりになっています。
そしてうれしいことに私とお二人が知り合うきっかけになった絵はがきのイラストも掲載されておるのです!
はっきり言ってこれは買いの一冊です。
身近な場所が案外暗渠だったということはよくあるもので、私も学生時代に観劇のためによく通った駒場東大前の暗渠、空川を訪ねて流路沿いをもう一度歩いてみようかな。
暗渠を挟んで七夕気分に浸るのも悪くないかもしれませんね。
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